親田辛味大根 峰竜太 そばの城 カッセイカマン 南信州下條村の観光情報

親田の座頭石

親田の座頭石

親田の座頭石

 むかし、目の見えない座頭市という旅の人が、杖を頼りに

極楽峠を越えて、親田へやってきました。

そして、戸屋根の追分というところまで来ましたが、

道が四つに分かれているので、行く先がわからなく

なってしまいました。

そこで、近くの畑で働いていたお百姓さんに

 「飯田へ行くには、どの道を行けばいいでしょう」

とたずねました。するとお百姓さんは

 「左へ行くと立石、右へ行くと粒良脇、

 まん中の道は親田の里、飯田へ行くにはこの道な」

そう言って座頭市の手を取って、親切に教えてやりました。

座頭市はていねいにお礼を言うと、教えられた道を杖をたよりに

飯田へ向かって歩いて行きました。

親田の座頭石

ところが、道がだんだん狭くなり、草や木が生い茂る山道に

入ってしまいました。

気にさえぎられ、とうとう先に進むことが出来なくなりました。

座頭市は道に迷ってしまったのです。

 「これはこまったぞ、どうしよう」

と座頭市は道ばたの石に腰を下ろし、しばらく動くことが

出来ませんでした。

 しかし、そんなことにくじけるような座頭市ではありません。

目の見えない悲しさを吹き飛ばすように

 「これしきのことに負けてたまるか、えーい!!」

と大きな声をあげると、足の下の石を思いきり踏みつけて

立ち上がりました。すると、その石に、座頭市の足の形が

きれいにへこんで付きました。

 座頭市は気をとり直すと迷った道を戻り、

また根気よく杖をたよりに歩きはじめ、

無事に飯田へ行くことができました。

 これを聞いた親田の人びとは、座頭市の足型にへこんだ石を

 「この石には、目に見えない人の悲しみや苦しみが

込められておるんな」

と語り合いました。そしてこの石を”座頭石”と呼んで、

”祠つる根”というところへ祀り、

座頭市の心を、人びとは大切に伝えました。

親田の座頭石

このお話は、人が苦しみや悲しみを乗り越えて生きてゆく強い心持と、体の不自由な人を思いやる人間愛を、大切に語り伝える民話です。

親田の座頭石