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北又のオトンボ淵

北又のオトンボ淵

北又のオトンボ淵

 むかし、北又沢が天龍川に流れ込んでいたある淵で、

村人が大きな一匹の鯉を釣りあげました。

村人はたいそう喜んで近所の人たちをさそい、

傘松というところで天龍川を眺めながら、その鯉を料理して、

みんなで食べようということになりました。

 大勢の人があつまり、大きなまな板や包丁や鍋が用意され、

にぎやかに料理がはじまりました。

 そして、元気な若い衆が二人掛かりでタライの鯉を持ち上げて

まな板に乗せ、包丁で切ろうとしたときのことです。

 うす暗い天龍川の淵から

 「オトンボこーい オトンボこーい」

北又のオトンボ淵

と呼ぶ女の人の声が聞こえて来ました。

 不思議に思って村人は淵を見おろしました。

するとそこには長い髪の毛を顔にざらんとたらし、

腰から下は魚で、青い顔をした女の人がいました。

女の人はやせ細った長い手で、村人の方へ向かって

手招きしながら

 「オトンボこーい オトンボこーい オトンボこーい」

と悲しそうな顔で呼んでいるではありませんか。

村人はそれを見たとたん恐ろしくなって、

ガタガタと震えました。

 そのときまな板の上の鯉が、突然大きく飛び跳ねたかと思うと

あっという間に天龍川の薄暗い淵の中へ、

ドボーンと大きな水しぶきを上げて飛び込んでいきました。

波が立っている天龍川の淵を、村人が恐る恐る見ると、水の中から

 「フフフフ フフフフ」

という気味の悪い女の人の声が、淵いっぱいに響くように

聞こえて来ました。

 その声を聞いた村人は、恐ろしくなっていちもくさんに

家へ逃げ帰っていきました。

 このことがあってから、この淵で魚をとってはいけない

ということになり、ここを「オトンボ淵」と呼んで、

いつまでも伝えられました。

北又のオトンボ淵

北又の下荷場と言う所から見下ろす天龍川の景観は、壮大で眺めのよい、昔から人びとの憧れの場所でした。ところが、ここで魚を獲り川が汚されたことから、ここで魚を獲ってはいけない。という戒めの民話です。そして、たゆみなき天龍川の流れとして、人びとの心に大きな希望を与え、下條小中学校の校歌に詠まれる大事な場所になりました。

北又のオトンボ淵