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小間物売りと粒良脇大林の守り神さま

小間物売りと粒良脇大林の守り神さま

 山田河内の三墓の原から粒良脇の日陰坂へおりるところを

大林と言います。むかしは大きな木が茂り、昼間でも

暗い山道でした。

 ある日の夕方のことです。荷物を背負った一人の小間物売りが、

仕事を終え、自分の家へ帰る途中にこの大林を通りかかりました。

 しかしこの大林には、人を襲う悪者が出るという噂があって、

そこまでくるとなかなか足が前に進みません。それでも

小間物売りと粒良脇大林の守り神さま

 「早く帰らんと」

とおそるおそる坂をおりはじめたときです。なにか

物音がしました。

辺りを見渡しましたが、なにも見えません。

 「なぁんだ、気のせいか」

そう思ってまた物売りが歩き出すと、こんどは

 「バシッ バシッ」

と枯れ枝を踏む足音が、はっきり、聞こえてきました。

物売りは恐ろしくなって、思わずその場に立ち止まり、

一歩も進むことが出来なくなりました。

体がふるえ、思わず目をつぶったそのときです。

家に祀ってある三峯さまのお札が頭に浮かんで来ました。

物売りは手を合わせて

 「三峯さま、三峯さま、お助けください」

と大声でとなえました。すると小間物売りの足が、一歩前に

出るではありませんか。それから何度も「三峯さま、三峯さま」と

となえながら、はや足で道をおりはじめました。

すると、目の前に真っ白い犬のようなものが現れ、小間物売りを

守るようにそばを歩いていきます。そしてふもとまで来ると、

すーっとその姿は消えていきました。

小間物売りと粒良脇大林の守り神さま

 無事家に帰りついた小間物売りは、早速神棚の三峯さまを

拝みました。そしてあの白い影は、旅びとを守ってくれる

「お犬さま」だったのだと気がつきました。

 小間物売りは自分を助けてくれた御礼にと、大きなお椀に

白いご飯を山盛りにして、庭先に置きました。そして、

 「お犬さま お犬さま、どうぞ召し上がっておくんないしょ」

といって手を合わせ、お犬さまを拝み、

その夜はゆっくり休みました。

 次の日の朝、外に出て見るとお椀に盛ってあった山盛りのご飯は、

一粒も残らずきれいになくなっていました。

小間物売りは

 「お犬さま、守ってくださりありがとうございました」

と御礼を言って、また小間物売りに出かけて行きました。

小間物売りと粒良脇大林の守り神さま

大きな森や林には霊魂が住まう。とする信仰は、人びとの自然環境に寄せる、昔から伝わる自然信仰です。この民話は、そうした信仰による「大林の狐火」の伝説とともに、大林に寄せる粒良脇の人びとの信仰を伝える物語です。

小間物売りと粒良脇大林の守り神さま