夫婦神様が開いた月原
夫婦神様が開いた月原
阿智原はむかし、月原と呼ばれていました。そこにはこんなお話が伝えられています。
大むかし、出雲の国の神さまをさがして、ほかの国の
夫婦神さまが、立石の方から阿智川を渡ってやってきました。
そして広い原っぱまで登って来て、小高い丘の上に立ちました。
すると暗くなりはじめた東の空に、まんまるい大きなお月さまが
のぼりました。月は辺り一面を昼間のように照らして、
夫婦神さまが立つ足もとから、
それはそれは美しい草原が広がりました。
夫婦神さまは、
その美しさにしばらく見とれていました。
そして、長い旅のつかれもわすれて元気を取り戻すと、
その草原に向かって
「おゝ月の原」
と大きな声で呼びました。それから夫婦神さまはここを
「月原」と呼ぶようになりました。
すっかりこの月原が好きになった夫婦神さまは、
ここに住むことにしました。
しばらくすると、夫婦神さまに元気な男の子がさずかりました。
男の子は立派に成長し大人になりました。
けれどもそのころ夫婦神さまは、
この月原でお亡くなりになりました。
その子は亡くなった夫婦神さまを大切に伝えようと、
男と女二つの石神さまを月原に祀りました。そして、
その月原を出て阿智川を登って行った先で新しい草原を切り開き、
そこを月原と呼んで暮らしたということです。
やがて、夫婦神さまの子がその地で亡くなると、
阿智の神さまに祀られました。
そしてもとの月原を、「阿智原」と呼ぶようになったそうです。